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KOBE NOU-GYO Lab 2025:兵庫漁業協同組合のみなさんフォトレポート

2025年に始動した「KOBE NOU-GYO Lab」(神戸農漁ラボ)
農家さんや漁師さんが“体験プログラム”をつくることで、もっと一次産業に関心をもつ方、一次産業に関わる人を増やそうという取り組みです。
2025年度は11のプログラムが実現に向けて動き出しています。
今回は、体験プログラムの様子をお伝えします。vol.4は兵庫漁業協同組合のみなさんです。

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兵庫漁業協同組合/糸谷謙一さん

数年前より、海に触れ、海について考えてもらうきっかけとなる体験活動や視察受け入れを続けている漁師の糸谷さん。一方でこんな課題も抱えていました。
・漁師の仕事をしながら、視察や体験活動の受け入れに関する調整をするのが負担となっている。
・無償での対応も多く、継続可能な状態になっていない。
・糸谷さんの属人性が高いためプログラム化されておらず、外向けの概要資料なども作成されていない。
そんな状況の中で、神戸農漁ラボ事務局と検討を重ね、視察や体験活動の内容を整理して発信しつつ、それを見て応募ができるような受け入れの仕組みづくりを進めることとしました。

11月某日。神戸農漁ラボ事務局が兵庫運河に集まり、糸谷さんが普段行っている視察を実際に体験してみることにしました。
糸谷さんたちが環境教育に取り組むようになったキッカケは、海が痩せ、魚が減ってきた現実があります。乱獲だけでなく、埋め立てや直立型の護岸による浅場や藻場の消失、それに伴う栄養やプランクトンのバランス崩壊など、都市の暮らしと深く結びついた問題だということが分かってきました。
現在、兵庫漁協が最も力を入れているのは、魚が育つ「浅場と藻場」の再生です。この場所は生き物にとっての“保育園”としての役割があります。あらゆる人が自分ごととして理解できるよう、環境学習プログラムの実施や視察の受け入れをしています。
最初は、廃材の木枠でつくられたプランターが並ぶ「ウンガノハタケ」の説明です。海を守るために“山・大地・食”の繋がりを実感してもらう学びの畑です。海と山と大地は一本の線で繋がっています。地産地消で農家を支え、田畑が豊かになることが、巡り巡って海を豊かにする。そんなことを体感できる場所になっています。

続いてすぐ横にある浜に移動します。こちらは、地元の小学校の子どもたちが「浜っ子きらきらビーチ」と名づけた石組護岸の砂浜です。神戸市内で最も多くのアサリが集まる、貴重な“いのちの砂浜”として生まれ変わった場所です。アサリをはじめとした「二枚貝」が海の生態系の要であり、その減少が魚の減少につながることが明らかになりました。里海を育て、そこから大阪湾へと豊かさが広がる未来を目指す取り組みになっています。海を再生させる鍵は、干潟と浅場の復活。浜っ子きらきらビーチは、その“答えが見える場所”でもあります。

歩いて数分、もう1か所は、糸谷さんの母校の前にある「兵庫運河港湾発生材活用・干潟実証試験場」です。こちらは、湾口整備などの廃材を活用した砂浜となっています。砂浜や干潟をつくることによる海の環境づくりと共に、本来廃棄するものを利活用することの実証実験が行われています。

糸谷さんのお話はどれも興味深く、これから多くの人に知ってほしい人間と海の関係性であるような気がしました。

今後は、視察内容の概要が分かるウェブページの作成や、その周知方法、また受け入れの金額等について検討を進めていきます。

 

撮影:岩本順平